民間需要と公的需要(令和元年度 経済学・経済政策 第3問)

問題

国民経済計算は、総需要をいくつかの項目に区分している。これらの項目を見ることによって、より詳細に総需要の状況を把握することができる。

国民経済計算における総需要に関わる恒等式として、最も適切なものはどれか。

 

ア 公的需要=公的固定資本形成+公的在庫変動

イ 国内需要=民間需要+公的需要+財貨・サービスの輸入

ウ 総固定資本形成=民間住宅+民間企業設備

エ 民間需要=民間最終消費支出+民間住宅+民間企業設備+民間在庫変動

 

解説

  • 国内需要=民間需要+公的需要
  • 民間需要=民間最終消費支出+民間住宅投資+民間企業設備投資+民間在庫品増加
  • 公的需要=政府最終消費支出+公的固定資本形成+公的在庫品増加

ア:公的需要に政府最終支出が含まれていないため、正しくない。

イ:国内需要に財貨・サービスの輸入が含まれているため、正しくない。

ウ:総固定資本形成とは、家計の住宅投資・民間企業の設備投資・政府の公共投資など新規に購入された資産のこと。公的固定資本形成が含まれていないため、正しくない。

エ:正しい。

なお、国内需要(=民間需要+公的需要)に財・サービスの純輸出(輸出-輸入)を加えたものが国内総支出(GDE、Gross Domestic Expenditure)となる。国内総支出とは、国内所得が財やサービスの購入のために支出された金額のことをいう。

 

解答

中国の貿易相手国(令和元年度 経済学・経済政策 第2問)

問題

国際経済に大きな影響を与える国の1つとして、中国の経済動向は重要である。下図は、中国の貿易相手国・地域のシェア(2017年)を示している。
図中のa〜cに該当する国・地域の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

中国の貿易相手国

 

〔解答群〕

ア a:EU b:アメリカ c:日本

イ a:EU b:日本 c:アメリ

ウ a:アメリカ b:EU c:日本

エ a:アメリカ b:日本 c:EU

 

解説

中国は世界トップレベルの貿易大国であり、輸出国としては世界1位、輸入国としてはアメリカに次ぐ第2位の規模を誇る。世界の一大生産拠点、および巨大な市場として国際貿易に大きな影響力を有している。

本問は中国の貿易相手国に関する出題だが、まずは特徴的なaから見てみよう。aは中国の輸出先としては最大だが、輸入におけるシェアはさほど大きくない。言い換えるとaは対中貿易で赤字が大きい国となり、あてはまるのはアメリカである。

次にbだが、中国の輸入相手先で1位なのはEUである。2000年における中国の輸入額1位は日本だったが現在はEUASEANが上回っており、地理的に近い日本よりもEUの方が貿易における中国との結びつきが強い状況になっている。

 

解答



 

政府債務残高の国際比較(令和元年度 経済学・経済政策 第1問)

問題

下図は、政府の債務残高(対GDP比)の国際比較である。
図中のa〜cに該当する国の組み合わせとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

政府の債務残高対GDP比の国際比較

 

〔解答群〕

ア a:アメリカ b:イタリア c:日本

イ a:イタリア b:日本 c:アメリ

ウ a:日本 b:アメリカ c:イタリア

エ a:日本 b:イタリア c:アメリ

 

解説

「債務残高対GDP比」とは政府が抱えている借金を国内総生産GDP)と比較することで、一国の経済規模に対する債務の大きさを表すために用いられる指標である。簡単に言えば、国の借金を国の収入で割ったもの。

債務残高対GDP比が100%であれば収入と同額の借金をしている状態、50%であれば収入の半分の借金がある状態、200%であれば収入の2倍の借り入れをしていることになる。政府の借金は公共サービスへの投資など経済・社会を回す上で不可欠な部分もあるが、債務残高対GDP比が高まれば一般的に財政破綻のリスクも高まる。本問の選択肢に登場する日本・イタリア・アメリカの3ヵ国は、いずれも対GDP比の政府債務残高が主要先進国の中で大きい国々である。

まず、グラフの中で最も特徴的なaに着目してみる。aは政府の債務残高対GDP比が200%以上と断トツに高い水準で推移しているが、これに該当するのは日本である。日本は歳出が歳入を上回る財政赤字が続いており、税収の不足分を国債発行で埋めている。日本国の財政を家計に例えると月収30万円の家庭が毎月10万円ずつ借金を返済しながら、新たに毎月14万円借り入れている状態であり、債務残高対GDP比は主要先進国の中でもワースト水準となっている。

次に特徴的なのはcで、2008年以降の上昇が顕著である。2008年という時期からリーマン・ショックの影響を大きく受けた国が該当すると考えられ、これはアメリカがあてはまる。

最後に残ったbがイタリアとなる。イタリアはかつて日本を上回る政府債務残高(対GDP比)を抱えていたが、単一通貨ユーロへの参加を目的に財政健全化の取り組みを本格化させた。以降、思うように債務残高の圧縮が進んでいるわけではないが、横ばいの状況が続いている。

 

解答