流動性のわな(令和元年度 経済学・経済政策 第8問)

問題

総需要-総供給分析の枠組みで、財政・金融政策の効果と有効性を考える。
下記の設問に答えよ。

(設問1)
流動性のわな」の状況下にあるときのLM曲線は、下図のように水平になる。このときの総需要曲線に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

流動性の罠

〔解答群〕

ア 物価が下落しても、利子率が低下しないため、投資支出は不変である。した
がって、総需要曲線は垂直になる。

イ 物価が下落すると、利子率が低下して、投資支出が増加する。したがって、
総需要曲線は右下がりになる。

ウ 物価が下落すると、利子率は低下しないが、投資支出が増加する。したがっ
て、総需要曲線は右下がりになる。

エ 物価が下落すると、利子率は低下するが、投資支出は不変である。したがっ
て、総需要曲線は垂直になる。

 

(設問2)

流動性のわな」の状況下における財政政策と金融政策の効果と有効性に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

a 政府支出を増加させても、クラウディング・アウトによって総需要は不変である。したがって、物価水準も実質GDPも当初の水準から変化しない。

b 政府支出の増加は、総需要を拡大させる。その結果、物価水準が上昇し、実質GDPも増加する。

c 名目貨幣供給の増加は、総需要を変化させない。したがって、物価水準も実質GDPも当初の水準から変化しない。

d 名目貨幣供給の増加は、総需要を拡大させる。その結果、物価水準が上昇し、実質GDPも増加する。

〔解答群〕

ア aとc

イ aとd

ウ bとc

エ bとd

 

解説

(設問1)

流動性のわなとは、金融緩和によって利子率がこれ以上下がりようがないレベル(0%など)まで低下し、貨幣需要が無限大である状態のことをいう。流動性のわなの状況下では、貨幣需要の大小が利子率と無関係になるため、LM曲線は水平の形になる。

また、物価が下がってもすでに利子率が最低水準に達しているため利子率が低下せず、総需要が増えないため総需要曲線は垂直の形になる。

 

(設問2)

クラウディングアウトとは、政府による財政政策の拡大が利子率の上昇を招いてしまい、結果として民間の資金需要が抑制されて国民所得拡大の効果が薄れてしまう現象のことである。

a:流動性のわなの状況下に置いてはLM曲線が水平であり、クラウディングアウトは発生せず財政政策は有効である。よって、正しくない。

b:正しい。

c:正しい。

d:流動性のわなの状況下においては金融政策の効果は表れない。よって、正しくない。

 

解答

(設問1)ア

(設問2)ウ