消費の決まり方(令和元年度 経済学・経済政策 第4問)

問題

消費がどのようにして決まるかを理解することは、経済政策の手段を検討する際にも、また、景気動向を予測する上でも重要である。一般に、消費の決定に所得が影響すると考えられているが、具体的な影響の仕方についてはいくつかの考え方がある。
消費の決定に関する記述として、最も適切なものはどれか。

ア 恒常所得仮説では、一時金の支給によって所得が増加しても、消費は増加しない。

イ 絶対所得仮説によるケインズ型消費関数では、減税によって可処分所得が増加しても、消費は増加しない。

ウ 絶対所得仮説によるケインズ型消費関数では、定期給与のベースアップによって所得が増加しても、消費は増加しない。

エ ライフサイクル仮説では、定期昇給によって所得が増加しても、消費は増加しない。

 

解説

まずは、「絶対所得仮説」「恒常所得仮説」「ライフサイクル仮説」について簡単に整理しておきたい。

  • 絶対所得仮説とは、今期の消費支出は今期の所得水準に依存して決まるという考え方である。絶対所得仮説に基づけば、可処分所得が増加した場合はそれに比例して消費も増加することになる。
  • 恒常所得仮説とは、今期の消費支出は恒常所得(長期にわたって今後も獲得できるであろうと予想される平均的な所得)に依存して決まるという考え方である。恒常所得仮説に基づけば、一時的な要因によって得られた変動所得は消費を増加させないことになる。
  • ライフサイクル仮説とは、今期の消費支出は一生を通じて獲得できるであろう生涯所得に依存して決まるという考え方である。

ア:一時金の支給は変動所得であり、恒常所得仮説においては変動所得が増えても恒常所得が増えない限り消費は増加しないため、正しい。

イ:絶対所得仮説においては所得が増えれば消費も増える。減税は今期の可処分所得が増えることになるため、消費も比例して増えるはずである。よって、正しくない。

ウ:絶対所得仮説においては所得が増えれば消費も増える。給与のベースアップによって所得が可処分所得が増加すれば、消費も比例して増えるはずである。よって、正しくない。

エ:ライフサイクル仮説においては、個人の消費行動は生涯所得を念頭において決定される。定期昇給によって生涯所得が増えれば消費も比例して増えるはずである。よって、正しくない。

 

解答